ザナ「おいっ、ネオ。こんな事も出来ないのかよぉ、師匠だろぉ。」
狩りの途中で流石に体力では負けるだろ。
ネオ「ザナ、右と左、来ているぞ。俺は右。」
波動でぶっ放す。流石に子連れ熊はヤバいわ。
ネオ「ザナ、大きいの無理か?」
しょうがない、剣の切れるやつ使おう。
ネオ「ごめんね。」
一瞬だった。熊が両足ちぎれて倒れた。
ザナ「何だよ、手柄横取りすんなよな。」
言うと思ったよ、ザナちゃん。
狩りは一応終わったものの、熊って食べれるのか?そもそもどうやって運ぶんだよ。
ザナ「あ~~疲れた。」
そうだな、まず休もう。
ネオ「小刀出して、ここで裁くしか無いな。ザナ、出せるか?」
ザナ「もう持ってるよ。ネオ、ここで変な事考えたら、捌くからな!」
お~こわ。目が本気だよ。
ザナ「ほら、何やってるんだよ。まず、熊にとどめ刺せよ。」
熊を見る。もう観念しているようだった。手を使わずに楽にしてやろう。
ネオ「また生まれたら、森で遊ぼうな。」
暫くして熊はこと切れた様だった。
ザナ「手ぐらいは合わせようぜ。」
頷くと静かな時間がしばらく続いた。
ネオ「もう良いだろう。」
これを合図に二人は手慣れた様子で裁きだした。俺たちの血肉に成るのである。
ザナ「ほら、もたもたしてんなよ。時間ないだろ。あ~~」
流石に裁きは、ザナ、手慣れたもので殆どザナが捌いてしまった。
ザナ「だから、だらしないんだよネオは。」
とほほ、今日何回言われたんだろう。
ネオ「ところでここどこだよ?」
ザナ「地図持ってきてないのかよ。」
やばい、日が落ちかかっている。この状態だと最悪パターンが待っている。
ザナ「ど~すんだよ師匠!」
下手に持ち上げて来たよ。しゃ~ない。
ネオ「熊はすぐには食べられないから、この辺結構木の実あるんじゃない?」
ザナ「下の川に下りれば魚居るかもな。」
ネオ「最悪寝床探して、一泊するしか無いかもな。」
ザナ「私、まだ16歳の女の子だよ?ど~してくれるんだよ。」
いやいや、男並みに暴れているから。おいおいザナ泣くんじゃないよ。
実際俺の方が危ないから。剣握りしめてるし。
ネオ「ザナが良い寝床で寝て、俺は外で寝ればいいんじゃない?」
ザナ「本当?ひっく、ひっく。」
ネオ「ああ、本当さ。一晩中守ってやるよ。」
ザナ「今夜、ぬいぐるみ居ないから、手、握りしめていてくれる?」
急に女の子になったな。びっくりしたわ。
ネオ「子守歌歌っても良いよ。」
ザナ「本当?ううう。」
とりあえず、俺の着ている上着着せて、手を握ってやった。
ネオ「もう泣かないんだよ。ほら、木の実甘いよ。」
ザナ「うん。ネオ、温かい。」
おい、そんなに寄り添うなよ。何か変だぞ今日のザナ。
ザナ「パパはこうやってしてくれたもん。」
ネオ「今日は魚焼いて食べよう。」
ザナ「解った。」
ネオ「寝床はあすこの窪みで良いんじゃない?」
ザナ「寒くない?」
困ったなぁ。男の子だったら雑魚寝だろうけど、よりによってザナだからな。
ネオ「パパはどうしてくれたの?」
ザナ「ずっと起きて、添い寝してくれた。」
しゃ~ない。ここでぐずられても困るしな。
ネオ「解ったよ。パパの様にしてあげるから。」
ザナ「本当?」
下から覗き込む様にザナが見てくる。
ネオ「本当だよ。」
ザナらしくもなく絡んできたよ。こういう時、本当に困るんだよな・・
あ~~仕方ない。パパに成ってやろうじゃないか。
ザナ「ザナのパパ。今だけだぞ。」
服の袖を固く掴んで離そうとしないよ。ザナは子供に戻ったのかな?
ザナ「お腹空いた。」
はいはい。今、魚捕まえて焼いて来るよ。
ザナ「ネオ、寒い。」
うわ~。さっき上着貸しただろう。
ザナ「少し横になりたい。」
はいはい。ただ今。待っていなさい。
まったく手のかかる。薪と魚取と料理と寝床づくり、まったく忙しい。
ネオ「お~~い、ザナ。用意出来たからおいで。」
ザナ「まぁ、パパとしては半人前ね。」
言ってくれるね。どんなパパだよ。
ネオ「焚火で温まると良いよ。そのうち、魚焼けるからね。」
黙ってザナがこっちを見ている。いつもだったら憎まれ口の一つは出るのに・・・
今日はピタッとくっついて離れないよ。
ネオ「ザナは何歳の時にパパと離れたの?」
ザナ「ん~~、12かな?」
まだ小学校のころじゃないか。寂しいのもうなずけるわ。
ネオ「今日だけは特別だからいくら甘えても良いよ。我慢していたんでしょ?」
この言葉が終わらないうちにザナの目から大粒の涙がぽろぽろ零れ落ちて、いつもとは違う、子供の顔に戻っていた。
ネオ「いいんだよ。今日だけ。背中さすってあげるから。いっぱい泣きなさい。」
30分ほど、やり取りが続いた後、ザナの鼻をかんでやって、ご飯を食べさせた。
ネオ「あ~どうやってエメルやユナと連絡とろうか?」
ザナ「いいの!今日はザナだけのパパなの!」
ネオ「そりゃそうだけどさ。」
ザナ「ネオはザナだけのパパでいいの!」
何にも言えないよ。
ザナ「寝るっ。」
お腹いっぱいで眠くなるのは完全におこちゃまだよ。
ザナ「ネオ、お腹貸して?」
ネオ「は?」
ザナ「いいから!」
突然ザナになぎ倒された。そして俺の腹を枕に、ザナ、くつろぎ始めて、10分もしない内にすやすやだよ、ったく。
ネオ「腹まくらかよぉ。」
でも可愛いからいいや。よくこんな森の中ですやすや練れたもんだ。火はついているけど。
ネオ「これじゃあ、俺寝れないじゃん。」
こいつ、確信犯だろう。おじさんをからかいやがって。まぁ、この寝顔だけに許すとするか。夜、長いなぁ。獣が近づかない、勿来の気配を出しておこ
う。
しかし腹の上に女子が寝ているってのもなぁ・・パパと言われちゃ、しゃあないか。
ザナ「う~~ん、ネオ、駄目じゃない・・・う~~~ん。」
夢の中でまで俺怒られているよ、とほほ。あ~もうすぐ夜明けだ。長い夜だった。
あ、ザナが起きて睨んどる。
ザナ「ネオ、触らなかったよね?」
ネオ「そんな器用な真似できないよぉ。」
しばらく見つめられて、むくっとザナが起き上がり、
ザナ「パパにもしてたんだ。」
ネオ「何?」
ザナ「ありがとう、ちゅっ。」
突然のほっぺへの朝の挨拶だった。
ものすごく後が怖いので、固まってしまった。当のザナはにこにこしている。
ザナ「おいネオ、荷物まとめて帰るぞ。」
ネオ「はいっ?」
ザナ「そこの川伝いに下っていけば、いつもの宿につくよ。」
ネオ「早く言えよ!」
ザナ「だってさぁ・・・」
ところであの「ちゅっ」は何だったんだ!それに帰り方、なんで言わないんだよ!
参ったよぉ、本当に。
ザナ「だから早くしろよ、トロいんだよ。」
はいはいっ、ザナ様様だよ。
ザナ「それと昨日と今日の事は内緒だからな。解ってる?」
ネオ「あ~~はいはいっ。」
これだから思春期は疲れる。
ザナ「よしっ、張り切って帰ろう。な、ネオ。」
ザナ「ザナだけのパパだもんね~。」
なんかやられたっぽい。あの「ちゅっ」は無かった事にしよう。
なんかマジ疲れた・・・。