心の闇の案内人   菊田春美

  • 出会い

主「うあぁ、ここはどこだぁ、俺は何処にいるんだぁ」

断片的にしか思い出せないけれど、確か、次元の裂け目に落ちて、何処かの世界の森にさ迷いこんだらしい。

主「そういえばあの娘たちは誰なんだ。しかも三人も、こんな森の中に、、ここはどういう世界なんだ。」

次女「教えてあげましょうか?」

主「うっ」

次女「あなたはどうやら異次元の世界から来たようね。」

主「教えてくれ。ここはどこなんだ。そして俺は一体誰なんだ。」

三女「教えてあげましょうか?と、いうよりもあなたが自分で見つけていったほうが早そうね。」

長女「これこれ、人をからかうものでは無い。異次元を超えて来たということは、そういう力があるんだから、油断してはいけないでしょ?」

三女「そうかな?そんな風には見えないけれど。」

次女「あはは、油断禁物かもね?」

主「おいおい、俺って結構いい歳しているから、こんな小娘たちに弄ばれている場合じゃないだろ!先ずはあの剣は、あっ、あったあった。腰元にちゃんと刺さっている。この剣の力が次元を超え、この子娘たちと出会わせた。それが剣の力なのだと思う。しかし、腰が抜けて、座った上から子娘三人に取り囲まれて話をしている姿は全く、間抜けとしか言いようがない。しかも腹まで空いてきた。まいったなぁ。」

三女「あらら、あなた、お腹鳴ってるし。今夜寝るところあるの?」

主「いやぁ、。」

次女「しょうがないわねぇ。この先に小さいけれど、ちょっとした食事と一人分くらいの寝床はあるから、いいでしょ?エメル?」

  どうやら一番、決定権があるのは、エメルという娘らしい。

エメル「すぐ出て行ってもらえるなら、何日かならば、食事も足りるでしょう。あなた、歩けるの?足、折れてない?」

主「何とか、それにしても、かたじけない。この年になって何と言って良いやら。」

次女「良いんじゃない?エメルが決めたんだから。さすが長女のだけはあるわ。」

三女「そうだね。家に行ったほうが落ち着くし、あなたの事もよく見えるでしょう。」

次女「ザナは、ああ見えても気で人を見抜いてしまうから、気を付けてね。私はユナ。あなたの名前は?」

主「俺か?そう、今更ながら、我が名は、ネオ。前の世界とネットの中ではそう名乗ってきた。特に意味はないがな。ところで、こんな事を聞くのはぶしつけだと思うが、何故、こんな森の奥深くにうら若い女性が三人も居られるのか、良かったら訳を聞かせてくれると嬉しいが、、」

エメル「聞いてどうするの?」

冷ややかな声でエメルが問う。

ネオ「いやいや、何か訳ありだとは気づいたが、何か力に成れるのではないかと思ってね。年だけは重ねているんだよ。」

ユナ「聞かないほうが良いんじゃない?  貴方の為にも成らないと思うし。それより今夜の食事のことでも、あなたのお腹のなり具合ですぐに想像できちゃうわ。あはは。」

ネオ「あたた、痛いところを突きよる。しかし、本当のことかもしれない。知ったところ故、わが身に火の粉が降りかからないとは言い切れまい。まぁ、意外としっかりした娘たちだな。」

ユナ「なんか言った?ネオオジサマ。」

ネオ「聞かれていたか、すまんな。」

ザナ「それより先を急ごう。風の吹き方が悪くなってきた。あと一刻ほどで日が落ちる。もうそろそろここいらも魔物で満ちてくるだろう。」

ネオ「そういう所なのか?この世界は?」

エメル「気を抜くと嚙まれるぞ!先を急ごう。」

  

従うより他無いだろう。曲りなりにもこの三人はこの世界を生き抜いて来た住人だ。

それなりの力もあるのだろう。それと、さっきから気に成っていたのだが、この娘たちと会ってから微妙に剣が震え、熱を持っているのだ。どういったことか?異次元同士の者が反応してしまっている。この事は娘たちには言わないでおこう。

ユナ「ほらほらおっちゃん、足元ふら付いているじゃない。しっかりしてよ。本当にもう、足手まといにだけにはならないでね。」

ネオ「言われているし。こう見えても俺は武道一般こなして、足さばきだけは自信があったのに、このお嬢ちゃんたちの身のこなしは普通じゃない。特にザナの体さばきは、そもそもこんなに薄暗いのに目を開けないで、実質走っているよ。どうなってんだよ、こいつら、外見と中身がまるっきり違ってる。ザナは野生の動物並みだよ!」

ザナ「驚いた?ネオ。私の眼は未来と心を見抜くの。こんな徒歩には、眼は使わないのよ。」

ネオ「まいったなぁ。なんて奴らだよ。外見、可愛いんだけどなぁ?」

三人とも「なんか言った??」

ネオ「迫力在り過ぎだろ!この歳で何故にここまでに成ってしまったのだろう。俺とした事がついていくだけで、精一杯だよ。」

ユナ「ほら、そこに小屋が有るだろう。もう少しだから頑張りな!」

  あの小屋か。立ち位置と造りはまるで小さな忍者屋敷を思わせる。

と、思わず腹が思いっきり鳴り響いた。

エメル「これ見よがしな鳴り方ね。何とかならないのかなぁ。」

ユナ「今、私の手料理を食べさせてあげるから、もう少し待ってね。

       なかなかそんな機会はめったに無いんだから。」

これは期待して良いものかどうか、いきなりファーストフードは勘弁だし、

まぁ、あり付けるだけでも有り難い話なんだが、なんせ娘さんと食事の機会はなかったなぁ。

何を食べても、おいしいというのが礼儀というものだろう。あぁ、あすこに見える小さな灯が建物の入り口だろうか?まず先が思い知れる。

ザナ「ついたぜ、ネオ。ここが地獄の一丁目にならなきゃいいな。早速火を起こすから、出来るんだったら手伝っとくれ。メシはそれからだ。仕事のしない者は食うべからずだからな。まぁ、頑張りな。」

    こじんまりとした建物に入ると三人はてきぱきと仕事をこなしている。ここでおろおろする訳にはいかない。

ネオ「なんでも仕事を言いつけてくれ。出来ることは何でもやるぜ。」

エメル「あらあら威勢のいいこと。最初だけじゃなければ良いけどね。」

ユナ「そのうちひっくり返るんじゃない?ならなきゃいいけどね。」

ザナ「ほらほら、口を動かす前に手を使え。メシが逃げていくぜ。」

ザナ「おっちゃん、もう息が上がってんぜ。しっかりしろよぉ。」

  声を出す暇なく体が動き、もうそろそろ腹のすき具合も限界となって来た。

ザナ「はいっ、お待たせのメシだよ。初めての割にはよく頑張ったな、おっちゃん。食べると良いよ。これしか無いがな。」

中ぐらいのパンとベーコン、卵焼き、おまけにチーズ、ワインはないがトマトジュースが十分に乗っている。

ネオ   「有り難い、ご馳走じゃないか。先ず、あなた達から食べてくれ。俺は最後に食べて食器を洗う。それが俺のルールだ。」

エメル「ネオ、ここのルールは皆が同時に食べて、一緒に片付ける。ここのルールだ。従ってもらうよ。」

ネオ「分かった、エメル。あなたがリーダーだ。」

ユナ「やっと分かったようね。エメルに従わなければ、ここにはいられない。それだけの能力をエメルは持っているの、分かるでしょ?」

      果たしてエメルはどんな能力を持っているのか、まだ分からないが、従っておこう。

ザナ「はいはい、おいしいうちに召し上がれ。それとネオ、ここには未成年しかいないから、ワインはないのよ。勝手に心を読んで、ごめんなさいね。」

この娘、やはり心を読むのは本当らしい。それとなんせ、この年頃、俺には昔、共に生きて可愛がった三人のメイにしか思えなかった。今はどうしているものか。そこまでザナは俺の心を読んでしまっているのか?いずれにせよ、この三姉妹、ただものではないことはよくわかった。

ユナ「さぁネオ、お腹が膨れたら、片づけて、そこのソファーに横になってしまいなさい。」

一瞬、ユナの眼が光ったような気がしてよくよくユナを目を凝らして見たが心と体が思うように動かない。

ネオ「ユナ、待ってくれ。トイレだけは行きたいんだ。」

ユナ「そうね、それは許してあげる。」

ほっとしてトイレを済ませたのもつかの間、またユナに心と体を支配されているのが分かった。

ザナ「ユナ、そこまでしなくてもこのおっちゃん、大丈夫みたいだぜ。私たちのことを親戚の娘か何かと思ってる。それにいつだって、私たちの力でこてんこてんに出来るんだから。」

とんでもない所に迷い込んでしまったようだ。しかし、ご飯も頂いてしまったしこのまま逃げるわけにはいかないだろう。

この娘たちなら俺の剣とバッグに入っていた謎の書物の事もわかり得るかもしれない。ともかく、勇気を出して話をしてみようか。

ネオ「実はな、君たちに是非聞いてほしい話があるんだ。俺は見ての通り、普通の老人かもしれないが、俺が持っているこの剣とこの書物のおかげで今までは無かった不思議な力が使えるように成ったのだ。そしてこれも不思議なことにこの力は君たちが持っている力とよく似ているようだ。

先ずはこの剣が熱を帯びて微妙に震えているのと、ご神体とも言えるべきこの書物だ。この書物によると、エメル、君の持っている力は生死を司る、そういう能力では無いかな?」

エメル「。。。。。。」

ザナ「何好き勝手な事を言ってんだよ、ネオ。何も知らないくせに!」

      ザナの周りに風が立ち、服が風になびいているように揺れていた。

ユナ「ザナ、力を使うのは止めなさい。ここは狭すぎるわ。この前、せっかく直したばかりなのに。。。。。。。」

エメル「ザナ、こんな者に力を使ったってどうしようもないでしょう。収めなさい。これは命令よ。」

ザナ「チッ、エメルがそこまで言うんだったら、収めてやってもよいぜ。よぅ、命拾いしたな、ネオ。」

      ユナが耳打ちしてきた

ユナ「ネオ、もうやめなさいよ。この前、ザナに逆らって、いうことを聞かなかった男のやくざさん、可哀そうにザナの怒りを買って、念でバラバラにされてたわよ。」

ネオ「それ、趣味悪いな!ザナの力が有るのは分かるけれど、力の使い方をまちがっちょる。反作用が怖いな。」

ユナ「何言っているのよ、ネオ。一番怖いのはエメルよ。瞬殺よ?いわゆる必殺仕事人並みだわ。やられている本人、気づいていないみたいだよ。」

ネオ「そういうユナも支配ってヤバいから。。」

ユナ「そういう姉妹なのよ、私たち。あの古めかしい書物を三人で紐解いた日から。」

ネオ「それってこの書物の事かな?」

      ネオは腰元のバッグの中からその彼女たちが言っていたであろう書物を取り出してユナに見せた。

ユナ「何故、貴方がこれを持っているの?しかも書物からくる威力が強い。吹き飛ばされそう。」

ネオ「しかも一緒に携えているこの剣は、実はこの書物を念を使って読み解いているうちに書物の文字一つ一つが湧現して、言霊が具現して現れた、いわゆる神具の一つの神剣なんじゃよ。この剣はものを切ることは出来ない。しかし普通出来ない心の闇を切り裂くことが出来る、なまくら刀なのじゃ。

私の力は、念と波動を操り、死を与える力。君たちによく似ているんじゃよ。」

ユナ「敵なの、味方なの?」

ネオ「味方でありたい。」

ザナ「あのさぁ、さっきから二人でこそこそ話しているけどさぁ、もう、夜八時回ったし、美容と健康の為に、もう寝ない?」

ユナ「そうねぇまず、一応ネオも男だから、何かある前に落としとくわ。」

      落とすって?俺を?あれ、足が動かない。目と耳が、なにこれ?

ザナ「まったく、落とすのいつも早いな。さすがユナ。もうネオはおもちゃだろ、これ。」

ユナ「起こしたときに怒られるから、やめときなよ。マジックで顔をいたずら書きは、ほどほどにしときな。」

ザナ「は~~~~~い。」

エメル「さぁ、私たちももう寝ましょう。気が緩んだすきに魔物に付け入られてもつまらないわ。」

ザナ「確かに。静かに寝ちまったほうがレーダーを張りやすいしな。」

ユナ「そういうことで、私は寝るね。お休み~~~。」

ザナ「わたしもねよ~~っと。」

      あれ、俺、何しているんだ?まだ夜のはずなのに、薄ら明るい。かろうじて目は動く。体は、、、、、だめだな。あ~~~ぁ、ザナ、だらしない格好で寝ているよ。やっぱりまだなんだかんだ言って、子供だな。しかし、眼だけは開いて体は動かないと不自由だな。いっそのこと、寝ちまおう、がぁ~~。

んっ、誰か俺の事、踏んづけてないか?あいたっ、こらっ

ザナ「いつまで寝ているんだよ、居候。ご飯抜きでもいいんかい?」

      なんだと、それは困る。体は動くのか?

ネオ「体が動かないんだよ。」

ザナ「なんだと?」

ユナ「あ~ごめんごめん、かけたまんまだったわ。はいっ、どうぞ。」

      なんだよ、体、動くようになったじゃねえか。何だったんだ、ユナの術?

ザナ「ほらさっさとメシ食べなよ。片付かなくて困ってんだよ。四人もいるんだからよ。わかるだろ?」

      それは悪かったと思いつつ、さっきの居候扱いに少しむっとした。

ザナ「ネオ、怒ってるの?顔に出てるよ。早くメシ食べれよな。」

      はいはいっ。無言でメシにあり付く。今朝は魚が付いていた。日本人は魚に限る。うまいじゃないか。これに卵焼きが付いたら絶品だな。

ネオ「ご馳走様。」

ザナ「さぁ、早く片付けて。今日は狩りに行くぞ。ネオ、ついてこれるか?」

ネオ「ザナ、早すぎんだろ。少しは加減しろ。これでも年寄りなんだから。」

ザナ「なんだって、居候!」

      何にも言えないよ。とりあえず着いていこう。俺も何かの役に立つかもしれない。

ザナ「期待しているよ、男前。」

      こんな時だけだよ。とほほ

ユナ「さぁお二人さん。お昼のご飯は持った?腹ペコだったらネズミも捕れないよ!」

ザナ「解ってるって。何たって、ザナとネオのコンビで気功と波動でばっちり仕留めてくるよ。並みのコンビじゃないから!」

エメル「そうね、しっかり仕留めてきてね。褒めてあげるから。」

ユナ「エメルが褒めるって、珍しいわね。昨日のネオの話が気に入ったかしら?」

ザナ「口はともかく、取ってきてナンボだから、気張るぞ、ネオ。」

ネオ「はい、はいっ。」

      結果は目標に近からず遠からず、イノシシ一頭、野兎一羽、魚五匹と、初回にしては良いんじゃない?

ザナ「だから、ネオが充分念を使いきれてないから、多少は役に立った程度かな?」

      微妙な言い方だよ、ザナちゃん。顔は可愛いんだけどなぁ。

ザナ「おいネオ、心の中で私に文句言っただろう。」

      なんでわかるんだよ!普通スルーだろ!たしかにかおはかわいいけど、へそが曲がってる。

      だいたい力ある者同士が同時に大きく力を出し合ったら、下手したらプルトニウムみたいに物質の分子が崩れて、核融合だろ。流石にザナとはいやだな。もう少しお淑やかだったら、考えてやってもよい。

      あ、ザナが睨んでるよ。めんどくさい。

エメル「さぁ、狩りから帰ったんだから、獲物の下処理をしましょう。ユナ、ザナ、解っているでしょ?」

ユナ・ザナ「は~~~~い」

ザナ「なんで、ネオはしなくて良いんだよ。」

ユナ「これは女の仕事なの。半分ザナも男だけどね、ぷっ」

ザナ「笑うんじゃねぇ、気にしてんだから。」

      確かに外見は花も恥じらう乙女なのにな。だってザナだからな、良いんじゃない?

ネオ「ザナ、可愛いもんな。」

      一応フォローは入れておこう。

ザナ「だろ!」

      本当に気にしているらしかった。

      流石に三人とも仕事が早いな。あっという間に獲物が捌かれていく。

ザナ「終わったぜ、エメル。これで良いんだろ?」

      血ぬきと塩漬けとかわはぎは、あっという間に終わり、今日のご馳走へと変わっていった。

ユナ「ネオ、今日は何が食べたいの?ご褒美に私が作ってあげる。」

ネオ「ユナの作ったものなら何でもおいしいだろ。」

ユナ「あら、ザナに睨まれているわよ。」

      本当だよ、困るんだよな、実際。

ザナ「ネオ、私のことも褒めてよ。」

ネオ「ザナは可愛いから・・・・・・・。」

      何とか機嫌直ったみたいだ。

      思春期は難しいな。勝手に心読むし。この次、お人形さんでも買ってやろうか?

      そういえばザナに昼飯取られて、何にも食べてないよ。さすがに腹すいた。

ネオ「何か食べたいんだけど。。」

ザナ「卑しくない?ネオ。」

      お前に言われたくない。

      あ~~~~めまいする、生の魚、今、まずいだろうか?

ユナ「はいはい。早速作るね。ザナ、リクエストは?」

ザナ「ケーキ!」

ネオ「だから、無いって。野っぱらにケーキ、落ちてないだろ!」

ザナ「言っただけだよぉ、おこるなよぉ。一応私、女子だから。」

ネオ「確かに(外見は)可愛い。」

ザナ「やっぱりぃ?」

      よく見ると三姉妹それぞれ美人ぞろいで、変な術、使わなかったら、皆かわいいのに。

      なぜか無言の沈黙が続いた。気のせいだろう。もう立っていられないほど腹が空いた。話すこともできない。

ザナ「おいっ、ネオ。何黙ってんだよ。」

      ちょっと無理、頭と手先が痺れてきた。

      だめだ、落ちる。、、、、、、あれ、床が柔らかい。良い香りもする。

ザナ「おいネオ、いつまで人様のしかもぴちぴちの娘の胸にうつ伏してんだ。羨ましすぎんだろ。」

      ありゃ、やばい。やばいけど体動かん。

ザナ「私、まだ彼氏と付き合ったことないし、これは、どう責任を取ってくれるのかな?それとも今ここで念でズタズタにしてやろうか?けりでも良いぞ?」

      このまま失神は、かっこ悪すぎるだろ。

ユナ「あら、ネオったら口から泡を吹いて白目むきかかってる。そんなに嫌なのかねぇ。」

ザナ「何だとネオ。今この場でザナちゃんの蹴りの刑だ。かくごしろ!」

エメル「やめなさいって。もう意識ないでしょう。よりによってザナの胸の中で白目むくって、何か訳がありそうね。ザナ、何か知らない?」

ザナ「そういえば、こいつ昼飯食べないでこき使ってやった。ってか、まずこいつ、床にたたきつけて良い?」

ユナ「流石にまずいでしょう。意識が戻ったら好きにするとよいよ。」

ザナ「そうだな。一応老人だし。2,3発蹴りで勘弁してやるよ。」

      ザナの蹴りって、木が折れるんだけど、、、、、、、、

ザナ「くそっ、こいつ、良い想いしやがって。」

ユナ「あはは、」

ザナ「飯食わせてないから倒れたのか。まぁ、エメルに倒れ掛からなくて良かったんじゃない?」

ユナ「怖いこと言わないで。私たちも巻き込まれるから。」

エメル「・・・・・・・・」

ザナ「今のうちにネオの写真でも撮っておこうか?」

ユナ「悪趣味だから、それ。」

      くそ~~。言われ放題だ~~~~

ザナ「おぅ、気づいたか。はちみつでもなめとけ。昼飯取って悪かったなぁ。でも良い想いしたから良いじゃん。お前、彼氏の前だからな。」

      うわぁ、俺が何をした?・・・・・ザナの胸に顔を突っ込んだのか?最悪じゃないか。でも良い香りがしたなぁ。

ネオ「悪かったよ、ザナ。ぶっ飛んだ。」

ザナ「解ってる。でも悔しい。」

      うわぁ、根に持たれたか?

ユナ「ザナ、よく我慢しているわね。いつもだったら手と足が同時に出ているでしょ?」

ザナ「もういいんだよ。・・最初の彼氏とは、海岸で夕日のタイミングでと決めていたのに、よりによってネオだよ、はぁ・・・」

ネオ「悪かったね。でもザナが女性らしいって良く解った。」

ザナ「なんだそれ?今頃?ザナちゃんは可愛くて、ナイスバディなんだよ。忘れないで覚えとけ!!」

      やばいと思ったのもつかの間、しっかりとザナちゃんのミドルキックが決まっていた。

      ぐわっ、しばらく呼吸できないじゃないか。こいつを怒らせたらだめだなぁ。

ザナ「せめて、可愛かったよくらいは言えよな、ネオ。」

      あばらが・・・・・暫くして呼吸できた。

ネオ「ごほっ、そうだね、ザナは女性らしいよ。」

      これ以上は何も言えないよ。

ユナ「さぁ、収まったところで、これから部屋の片づけと昼食の用意よ。ネオは、アバラ痛いんだったら、ザナに治してもらいなさい。彼女、医者だから。」

      意外過ぎだよ。本当かよ。壊し屋で医者って出来過ぎじゃない?

ザナ「ほらよぉ、面倒くさいんだけど、治してやるから見せてみろよ。おっちゃんの胸ぐらい見たって、なんとも思わないからさぁ、ほら早く、ぐずぐずすんなよ。」

      荒い医者だよなぁ、自分でやったんだろ。

ザナ「ここだろ?今、手当てするから少し、黙ってろよ。」

      するとザナの両手を痛いところに添えて、暫くするとザナの髪が軽く立っている。

      痛かったところも、鈍い疼きに代わってザナの手の温かさだけが残っていた。

ザナ「エセがやると、高いんだぞ。」

      確かに痛みは無くなっている。俺の回復の術と同じだ。

ネオ「ありがとうな、ザナ。楽になった。

ユナ「決してエメルに頼んじゃ駄目よ。命取られるから。」

      それ、やばいだろ。

ザナ「さぁ、ネオ。肩でももんでもらおうかな?疲れたわぁ。」

      調子に乗っていると思う。まぁ、いいが。

      負けずに念で肩をもんでやった。

ザナ「やっぱり使えるんだろ。でもザナちゃんの方が上だと思うよ♡」

      どんな会話だよ。だからパワー両方出しまくったら、プルトニウムみたいに分子崩壊して、この場が修羅場だろ。この辺一帯、太陽爆弾炸裂だよ。解って言ってんのかな、こいつ。舌出してるよ。

ネオ「あ~~~分かった、分かった。ザナちゃんは可愛いから、はいはい。」

ザナ「分かればいいんだよ。はいはいは余計だから。」

      暫く黙ろう。そういえばお昼ご飯まだかな?今日のおかず、なんだろう。。

ザナ「だから、卑しいんだって、ネオ。」

      考えるくらい自由だろ。反発しても、またザナが言ってくるので止めた。本当に、ザナは可愛いのかよぉ。ユナやエメルだって十分可愛いのに、可愛いけど怖すぎるんだよね、まったく。

ザナ「浮気すんなよ、ネオ。」

      はぁ~~~~~~

      何を言っているのか、ザナは解っているのだろうか?ったく、この年頃の女の子は面倒くさい。大人と子供の両方考えてやらなきゃならんし。これだけ能力がある子を、どう育てていいか、ひどく悩むよ。

ザナ「あれ、もうとっくに12時過ぎてるじゃん。ユナ~~、ご飯は?私のご飯は?」

ユナ「ちょっと悪いけれど、焦がしちゃったから、二人分だけ、下の川で狩ってきて。悪いね。」

ザナ「え~~~~~、やってらんないよ。ネオだろ~~。」

ユナ「ネオ、悪いわね。」

ネオ「あぁ、良いよ。ただ、ザナが暴れるから、、、、、、」

エメル「ザナ、女の子でしょ?しっかり食事の用意しなさいね。」

ザナ「あ~~い。河原行って、横になって、釣りでもするか。あ~~腹すいた。」

ネオ「さぁ、行くぞザナ。腕の見せ所だろ。」

ザナ「そこの川だろ。何か居るかな?おいっ、ネオ。鹿いるじゃん。シャケ泳いでるじゃん。桑の実なってるじゃん。ニジマスいるかなぁ?パパと昔、狩りに来ていたよ。」

ネオ「そうなんだ。このコクアの実は結構甘いよ。水もきれいだし、動物も来るんだろ。よし、久しぶりの波動使ってみるか。

ターゲット鹿、気をため込むまで20秒待て、標準調整、誤差なし、発動、鹿痙攣、ザナ、鹿捕獲いくぞ~~。」

ザナ「やりすぎじゃね~か?的外したら地面に穴あくだろ。」

ネオ「痙攣しているうちに鹿縛れよ。早くしろよ、ザナ。」

ザナ「こいつ、手柄独り占めにしやがって、鹿くらいでなんだよ。私だって練習すればできるわい。」

ネオ「分かったよ。ザナはできる子だから、運ぶの手伝っとくれ。もうじき暴れだす。」

ザナ「とどめ刺してないのかよ。まったく、もう。最後は私かよ。嫌な役押し付けやがって。」

      そしてザナが鹿の頭と目に手を当て、ザナが深呼吸すると鹿は静かに目を閉じた。

ザナ「ナムサン。また生き返って、元気に飛び跳ねるとよい。」

      掌で命を吸い取ったのだった。

ネオ「やるな、ザナ。命に対する礼儀を知っておる。それも三人で紐解いた古文書からか?」

ザナ「あぁ、そうだよ。暫く静かに休ませてくれ。鹿のやつが体の中で暴れるから。」

      俺と同じ業だ。どうやって習ったのだろう。そしてこの事を、ユナとエメルに話してみた。

エメル「どうやら、私たちで育てるのには、限界が来たようね。ネオ、あなたも同類なんでしょう。これは提案なんだけど、もしザナを育ててくれるなら、ここにいて良いと思うんだけれど、ユナはどう思う?」

ユナ「聞くまでもないわ。それはエメルが決めること。一族の長としてね。」

エメル「解った。ネオを私たちの一族の一員として迎えましょう。ザナの教育係と、一族のサポーターとして。」

ユナ「解った。ネオが変な動きをしたら、容赦なく命を頂くわ。」

ネオ「怖い話だな。三人に教えればいいんだろ、要するに。俺は厳しいからな。」

ユナ「あのザナが黙って言うことを聞くと思う?」

ネオ「そん時はそん時だろ。念と波動とコントロールで何とかするよ。」

ザナ「何だって?」

ネオ「居たのかよ。ザナの教育係だって、俺。」

ザナ「ふざけてる?よわっちいおっちゃんに?かましてよい?」

ネオ「格闘技も基本から教えねばならんな。」

ザナ「まずこの蹴り受けてからモノ言いな。」

      かわしたついでにザナのボディに一発。

ザナ「お前、可愛いお姉さんに一発かますとはいい度胸だ。そこを動くな!」

      結界を張った後、波動を二倍にして返してやった。

ザナ「お前、どうやったんだよ。別人だろ。」

ネオ「これ以上やっても無駄だ。従え。」

ザナ「ちぇっ、ちぇっ、そんな怖い眼で睨むなよぉ。解ったよぉ。殺気消せよ。」

ネオ「解ったのならよろしい。」

      一気に娘三人も出来てしまったよ。問題児含めて。あ~あ、俺も人が良いよなぁ。

ザナ「さっきの鹿は?飯は?腹減ってんだよぉ。」

ユナ「作っておいたわよ。鹿さんはお手柄だったわね。一週間は大丈夫。ザナ、ご飯食べた後、はちみつとってきてね。」

ザナ「分かったよぉ~。ネオにやらせれば良いのによりによって師匠だと。偉くなったねぇ~~。」

ネオ「偉いんじゃなくて古文書を正しく伝えて、三人の能力をパワーアップ。それから雑用だよ。」

ザナ「お前、風呂覗くなよ。」

      もう少し成長してから言ってほしい。

      さっきの鹿で、暫く狩りの方は間に合っているみたいで、あとは水汲みと掃除くらいか。まぁ、常に三人のボディガードではあるが。

ザナ「あ~今日は疲れたよぉ。早く風呂入って寝たいよぉ。」

      ザナがソファーを占領して、一人でくつろぎ始めた。俺の寝床・・・・年寄だって横になりたいんだよ。ったく、教育してやろうか?

      あ~~もう寝息立ててるよ。こういう時だけは可愛いんだけどね。結局寝床取られた。今夜は床か?まずザナを自分の寝床に運ぼう。

ザナ「ん~~、パパ。」

      おいっ、抱き着くなよ。しかも泣いてるじゃん。背中撫でてやろう。

ザナ「パパ、好きっ!」

      パパじゃないから、泣かれるのは一番困るよ、実際。ザナの寝床可愛いなぁ。古臭い汚れた犬のぬいぐるみ発見。

      ザナに握らせよう。・・やっと落ち着いたみたいだ。この時だけは天使だよ、こいつ。

      居間にいたユナに、パパのことを聞いてみた。

ユナ「いつか聞かれると思ってた。この生活とパパママの事。普通じゃないよね、私たち。」

      ユナが遠くを見ながら話しだした。エメルは、静かに椅子に座って、周りにレーダーを張っている。

ユナ「実は私たちにも良く解ってないんだ。パパとママがなぜ突然居なくなったか?あの書物ってパパが昔から大事に箱に入れていたものだから、何かあったらこれを見なさいって言われてたの。」

ネオ「それで書物を見て、三人ともスイッチが入っちゃったんだね。」

ユナ「それが良かったかどうかは分からない。」

ユナ「ザナだって誰だってまだ、パパママに甘えていたいもの。優しいパパ・・・・・・」

      言葉にならないようだった。果たして俺にそんな大役がつとまるかどうか・・・・

ネオ「辛くなったら甘えなさい。あなたたちは若い。まだ甘えていても良い時間もあると思うよ。」

      三人の娘の実感が湧いてきた。体や命を張って三人を守らねばなるまい

第一章 出会い 終わり

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